《MUMEI》

今まで行われたプロジェクトの内容、参加者の人数、勝ち残った者の人数。
そしてプロジェクトが行われたことによる国民の危機意識の向上。
だが、参加者や勝ち残った者たちのその後について、また開催地の決定については何も話す気配はない。
それでも真剣に聞く聴衆たちに、実川は少し気を良くしたらしく饒舌につまらない話をすすめていく。
ユウゴは視線だけを動かして様子を伺う。
警護の数は前方には二人だけだ。
後ろにもいるのだろうかと気になるが、誰も微動だにせず話を聞いているこの会場で一人だけ振り向くことは危険だ。
行動を起こす前に気づかれてしまうかもしれない。
もし後ろに数人いたとしても、すぐに近づいては来れないだろう。
ユウゴはそう予想し、足でケンイチの座る椅子を軽く蹴った。
ケンイチの顔がピクリと動く。
自分の意図が伝わったと判断したユウゴはそっと手を背中に回し、固く重たい銃を取り出した。
周りにはまだ気づかれていない。
ゆっくりと腕を組むようにして銃を隠し、左腕の下から銃口の先だけを覗かせる。

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