《MUMEI》 護ったモノは・・ガチャゴォン・・ 何かを言おうとしたリースの声を遮るようにドアが凄まじい速度で開けられ、ドアの前に立っていた彩詩に直撃する。 「あぅ!!」 「彩!」 彩詩の声と式夜の声が病室に響く。 頭を押さえて、ベットの側に蹲っている彩詩。横になったまま式夜に視線を送るリース。 「私が何をしたか知らないけど、式夜ごめんなさい!!」 式夜の姿を確認すると、とりあえず頭を下げた彩詩。 「彩・・よかった・・」 安堵した様子で大きく息を吐く式夜。 「ふぇ?私なにかしたっけ・・」 式夜の様子にう〜んと腕組みをして考え込む彩詩。 「主人、重傷なんですから。静かに自室で横になっていてください。」 冷静な口調に戻って彩詩の腕を掴むとズルズルと自室まで運ぼうとする。 「えぇ〜・・眠くないのに・・」 ブツブツ文句を言いながら式夜に着いていく彩詩。 病室を出る前にリースの方を向き、 「リースさん、・・私の名は砕月式夜です、貴女の姉である、ロアさんに助けていただいたお陰で生きています。・・・こんな事を言っても意味は無いのかもしれません、でも私が言いたいので言わせてください。・・・ありがとうございました。」 深々と頭を下げる式夜の声は震えているように聞こえた。 「・・・・姉さんは・・自分の信じたコトを・・護ったんだ。」 そう小さく呟いたリースの声は式夜や彩詩に聞こえただろうか。 そのまま彩詩を引っ張り、病室を出て行く式夜。 一人残されたリースはロアの髪留めを手に取る。 ポタ、ポタ。 髪留めに水滴が落ちる。 「・・・ごめんなさい。ごめんなさい。姉さん・・姉さん・・・私は・・バカだ。だけど・・だけど・・」 静かに嗚咽だけが病室に響いた。 前へ |次へ |
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