《MUMEI》
撮影とリアル
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俺たちのビデオ、或いはDVDを見ている奴等は




俺たちのリアルを………知らない


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後日










『い…あ、んっ……アッ…』


「大丈夫…?」



腰を進め終えた俺は、相手役の耳のした辺りに唇を寄せてから少し体を起こして

相手の顔を鼻がぶつかりそうな位近くで見つめてやる



『………』


相手も俺の方を涙を浮かべて見つめ返す。





……すげー演技力だな、なんて嘲笑うことはせずに。




「痛かった?」

額から頭頂部に向けて撫でる様に相手の前髪を退けて、啄む様にキスを落として心配そうにもう一度見つめてやる。




『…良いから…早く…しろ…』


相手が怒ったように…照れたように目を逸らして発したその声も、違わず男のもの。






俺の視界の端には俺たちの横顔を撮る、撮影用カメラ





「ごめんな」

俺は台本どおりに耳元で囁いて



『あ…ぁうッ…は…!』

律動を始めた














ふと。

俺…何やってんだろ





ぼんやり思いながら、


目を伏せた












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『はいカット!お疲れ様!』




「お疲れ様っす。竜汰さん…大丈夫スか?」

『大丈夫……』




繋がったまま、スタッフに渡されたタオルで竜汰の体を拭いてやる。


『お前とヤると…マジで良いから…ふ…』


俺が自身を引き抜くと、竜汰は僅かに息を漏らした


『男とヤるなんて正直痛てぇだけなのに…敦之はすげーよ』


「そう言ってもらえると嬉しいです」


と、はにかんで見せれば



竜汰の俺に対する好感度は上昇。












「また、ご一緒しましょうね」

コネを創っておいて、損は無い








皆に言っとくよ。
俺たちの交わりの中でよく聞く喘ぎ声、あれは九割演技だから。







リアル。







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服(と言っても、素肌にワイシャツを着て、あとはジーンズっていう適当な格好)を着終えて








さて…家に帰るか






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