《MUMEI》

ー…


窓のサッシにもたれたまま、山男はため息をつく。


「…おいこら。」

「あれ?なんでばれた?」

「…お前のソウは荒っぽいから、入ったらすぐ分かるんだよ。ダイちゃんの目の前だってのに。」

山男は首を少しだけ傾けて、薄目で後ろを見やり、後頭部の髪の毛をわしわしとかきながら近寄ってくる長身の男子生徒の姿を確認する。


「…部活は?」

「出てるだろ?」

「ここにいるヤツが何を言う。」

「だから、出てるだろう?」

「…お前な。」


もう一度だけため息をついて、山男は窓のある壁に寄りかかるように、身体の向きを変える。


「結構、俺の化(センス)もレベル上がってきたろう?グランドにいる人だけじゃなくて、教室からチラ見しているチカラたちの目も騙せるんだから。」

「善彦」

「なんだよ。」


得意げに部活のさぼった方法を話す善彦を、山男は無表情のまま非難の声を出す。


「スレシルになったからって、今までの生活をまるっきり変える必要は無い。ってサプリも言ってただろう?なんで部活にも出ないで魔法の練習してるんだよ。」

「…そう言うチカラだって。」

「俺は
「うちの教室の前の木だけ、やけに葉っぱが多いのは、お前のせいだろう?」

「〜〜〜」

「ほら図星。」


善彦の言葉に、反論の言葉を探す山男は顔を赤くする。


「っ…おれは、元々帰宅部だから、放課後教室でぼーっとしててもなんも問題ないし。
善彦は、今までずっと部活一筋にやってきたんだ。いきなり練習行かなくなったら不自然だろうが。」



山男の言葉に、善彦は、自然と窓の外に視線を流すと、自分達に比べて止まっている様に見えるくらいゆっくりと時を刻むソウの外側を眺める。









「…もう、あそこは俺のいて良い場所じゃないんだよ。」

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