《MUMEI》

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「…それなのに、『そんじゃ、また連絡するよ』とかトンチンカンなこと言って、さっさと電話切ったでしょ。覚えてないの?」

そこまで言われても、やっぱりピンとこなかった。微妙な反応をするだけの俺に呆れたのか、彼女は深いため息をつき、俺から視線を外してテレビを見始めた。

「変なヒトに部屋がバレるとイヤだから、そこのお寿司屋さんに逃げ込んで、1時間くらいかな…匿って貰ったのよ」

1時間も!?と俺がびっくりして声をあげると、彼女は一度こちらをひと睨みして俺を黙らせ、それからテレビに視線を戻して、ゆっくり言葉を続ける。

「経緯を話したらそこのご主人が、少し時間置いて帰った方がいいって言ってくれて…それから待ってる間に、知り合いの警察官に電話を取り次いでくれたのよ。で、何処の部署に何を相談すればいいのかっていうのと、そこの直通番号を教えて貰ったの」

聞き取るのがやっとな程、小さな声だった。疲れているような横顔だった。

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