《MUMEI》

まるで清涼飲料水のように、グビグビと一気に半分くらいビールを飲むと、それまでテレビに食いついていた隣の彼女が突然振り返った。

「明日の予定は?」

いきなり前置きもなく尋ねられて面食らったが俺は、仕事、と簡単に答えた。

「何時から?」

「えっと…6時半から」

「それじゃ、5時半くらいに起きれば間に合う?」

「うん、充分」

ポンポンとそんな会話を済ませると彼女は、「じゃぁアラーム、セットしておくね」と呟いて、目の前にある小さな丸いテーブルの上に、素っ気なく置かれた携帯を手に取ると、慣れた手つきでいじり始めた。彼女は俺が泊まりに来るといつも必ず、俺の翌日の予定に合わせて、甲斐甲斐しくアラームをセットしてくれるのだった。

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