《MUMEI》 頭の中で自分の鼓動が聞こえてくる。 緊張しているのだろうか。 ユウゴはそう思ったが、すぐに自嘲するように笑みを浮かべた。 いまさら緊張などするはずもない。 これは興奮なのだ。 ようやく殺したかった奴を殺せる。 その喜びだ。 ユウゴは沸き上がってくる感情を堪え、狙いを定める。 こんな撃ち方をしたことはないが、自然と撃つべき角度がわかる。 今まで様々な状況で撃った経験のおかげだろう。 銃口を微妙に動かしながら、べらべら話し続ける実川の体を狙う。 そこが一番確実な的だ。 もしかすると防弾チョッキを着ているかもしれないが、そのときはもう一発撃ち込めばいいだけのこと。 ユウゴは椅子に座り直すように自然と体を動かし、引き金に手をかける。 そしてぐっと指に力を込めた。 同時に右腕に衝撃が走ったが、ユウゴの体は微動だにしなかった。 壇上で笑みすら浮かべていた実川の顔がサッと強張り、何かに押されたように倒れていく。 それを確認する間もなくケンイチは立ち上がると、勢いよく周りに何かをばらまいた。 前へ |次へ |
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