《MUMEI》

「やだやだやだやだやだあ〜!」
七生がこんなに嫌がっているのは久しぶりだ。


「作品の為なの!」
先輩もいやがおうでも行使するってかんじ。


「キスするフリでしょう?
大袈裟な」
高遠、軽くいうけど彼にもプライドってものがあるわけで。
「スタントつけますか?
俺、別に構いませんよ」


「んーでも高遠くん髪の色違うからなあ、そうだ!木下くんはどうかな。」


「ええええ!」


「俺は構いませんよ」
なんだこの流れは!乙矢め利害一致すんな!


「だよな こーゆー役回りは二郎の担当だ。乙矢となんて死んでも無理。」
ギイィィ!七生ムカつく!


そして結局押しに弱い俺は引き受けてしまうのだ。

台詞なしのキスオンリーの為のシーン撮り、人気のないとこを探し歩いて日当たり良好な空教室を使う。

なるべく七生に近い頭にするために本人の手により髪を弄られる。

「今の心境は?」
耳元で七生がうっとりする美声で聞いてくる。絶対俺の不幸を面白がっている。


「最悪」
誰のせいだと思ってんだちくしょー!

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