《MUMEI》

「やっっっさぁーーーーん!大変大変!」

「?」「?」「?」



ガラァ!



「あぁぁ!こんな所にいた!1年生のまきちゃんが、転んで怪我しちゃった!なんか動くことも出来ないみたいなの!!先生助けて!」

「なに!?」

「やっさんが体育館にいないから!」

「今行くからちょっと待って!」




安田は入れたばかりのコーヒーをぐいっと一気に飲み込むと、そのままバタバタと女子生徒と2人で大騒ぎしながら生物準備室から走り去っていった。







軽く呆気に取られて廊下の方を見ていたら山男が少し楽しそうな声で話しかけてきた。



「生物、教えて欲しいんだ?」



「や、あれは!ここにいる理由を咄嗟に…」

「別に俺は良いけど?そういう口実でも作っていた方が、ここにまた来やすくなるだろう?」

「それはそうですけど…」

「授業の他に、明智用の指導案錬らなきゃなー。なんせ教えるところなんか無さそうな、秀才クンを教えなきゃならないんだもんなー♪」

「先生!楽しまないで下さいって!」

「ま、本当の理由は言えないもんな。これで、1つ秘密を守れたわけだ。」

「わぁぁ。失敗したぁ!」




山男の笑い声だけが、特別教室棟に響いていた。

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