《MUMEI》 「木下先輩は……どうやって、許せましたか。俺はまだ、どこかで俺を許せてない。」 先輩は、いつも先輩のままで俺を許してくれそうだ。 「……許して欲しい?」 彼の、艶かしい視線で射抜かれた。 「苦手です。 その質問口調、白状したくなる。」 「まるで犯人じゃないか。」 「犯人ですよ、俺は裏切り者です。」 餓鬼がふて腐れたみたいな言葉しか思い浮かばない。 「俺が、許してくれると思ってたでしょう、覚えてたよ。安西が庇ってくれたのに、傷負っちゃったね、でももう目立たないし、過去の話もこの痕みたいに引っ掻き傷程度なんだよ。」 先輩が俺を見る瞳が変わらないのは、刃物を持つ俺を知らないからだった。 甘えばかりの自分に、うちひしがられる。 ぼんやり、己の罪悪感に苛まれてると小さな点が近づいてくる。 「安西か!」 こちらに誰かが駆け寄ってきた。 「ウチ先輩……。」 声で離れていても、すぐに分かってしまう。 前へ |次へ |
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