《MUMEI》

「ピッ!!」



審判の笛が鳴り、



『後半 12:27』



再び時計が動き出す。


ボールは聖龍。



(栄二抜きか…)



表情に表すことはなかったが、


桜井は阿久津抜きという状況に不満を感じていた。



(せっかくの伏線もパー。


あのガキ…


ホント余計なことしてくれたな…)



「桜井?」



「…今行く。」



(やれやれ…)



パスを回しながらコートを進む聖龍。



(容赦しね〜ぞ…)



キュキュッ!!



(来るッ…)



仕掛ける桜井。



ヒュッ…!!



(速い…!!)



ボールは桜井から鈴木へ。



キュキュッ!!



ヒュッ…!!



(なっ…)



聖龍、


セットからの展開。


それまでの物とは違い、


スピードが格段に上がっていた。



(マジかよ…)



その起点は桜井。


急に上がったペースに合わせる他の選手たちの実力も、


海南の選手たちを驚かせる。



(これが本意気かい…)













……………













聖龍ベンチ。



「はぁ…」



「…どうしたんすか監督?」



「…こう言っちゃなんだが、
やっぱお前らまだまだだよ。」



「…は?」



「栄二。お前もな。」



「え…?」



「追い詰められるまで本気になれないだろ?


逆風が吹かなきゃダメっつ〜か…


ま…


そうやって強くなって来たのも事実だけど…な。」



「…」



「桜井がヤバいって判断してる。


それが、


何でかわかるか?」



「…いえ?」



「お前が抜けたからだろ。」



「…」



(桜井…)



「…明日も出番はあるぞ。」



「…はい。」

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