《MUMEI》

『チッ、しまった!
口封じか。』

矢の飛んで来た方を
睨み、骨型の笛で黒
狼三匹に命令を下す
サルタン。

直ぐさま三匹は、矢
を放った敵の追跡を
開始した。


『何なんですか、コ
レは…』

サルタンの背後から
震える声がする。
サルタンは、ゆっく
りとラント修道師の
方へ視線を向けた。

『余程のモンを隠し
持ってるんだな、な
ぁ…坊さん?そろそ
ろ白状した方が身の
為だぞ?』

暗に、そこの男の様
に“死にたく無いな
らば”と言う意味を
込め告げる。

ラント修道師は、青
ざめた顔で思案して
いたが、首を二、三
度横に振ると口を開
いた。

『彼らが探すモノは
…大修道師長様の遺
言書だと思う。しか
し何故あんなモノを
欲しがるのか、解ら
ない…。それにコレ
は何の変哲もない普
通の遺書です。ただ
少し……』

言いかけた、ラント
修道師の顔に焦りが
浮かぶ。サルタンは
その表情の変化を見
逃さなかった。

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