《MUMEI》
困惑
その頃、ジェルマは
ラント修道師の手紙
を読み返していた。

〔…親愛なるジェル
マ、もし貴方が家族
の事を知りたいと思
うのなら、私の元へ
戻りなさい。貴方の
出生の秘密をお話し
ましょう。
貴方の家族はこの国
で生きています。
だから貴方は、この
国に居るべきなので
すよ、ジェルマ。〕


『僕の家族。』

一人なのだ、とずっ
と思っていた。望ん
でも叶わぬ事だと…

皆が週末、家族の待
つ家へと帰る、その
嬉しそうな背中を見
るのが嫌で、部屋の
中で毛布を被ってた
僕。

『ジェルマ、出てお
いで?』

大修道師長様とラン
ト修道師様がいつも
優しい声を掛けて下
さった。

『悲しむ事は有りま
せんよ、ジェルマ。
人は皆、神の子供な
のですよ。私達は皆
兄弟なんですから』

そう言って下さった
のに、今更…僕の家
族?

ラント修道師の手紙
に、今更と思う気持
ちと家族の事を知り
たい、生きているの
ならば一目会いたい
という気持ちが交差
し、ジェルマは、困
惑していた。

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