《MUMEI》

ため息をひとつ吐き
窓を見上げる。と、
青い空に優雅に舞う
白い影。
…あれは、ケインの
白い鷹、たしか、そ
うだ。

白き鷹は、宙で弧を
描く様に旋回しなが
ら、ゆっくりと下降
して行く。その辿り
着く先には……。


『サムソン!』

鷹の名前を呼ぶ、ケ
インの姿。その左腕
にふわりと舞い降り
る。

ケインが愛しげに鷹
の頭を撫でると、気
持ち良さげに目を閉
じる。

確かな信頼関係を目
の当たりにした、ジ
ェルマは、またひと
つ大きなため息を漏
らす。


…僕がラント修道師
様の所へ戻ると言っ
たら、ケインは引き
止めてくれるだろう
か?


『ははっ、それはな
いよね…だって、大
修道師長様に頼まれ
たから、ケインは仕
方無く…っっ…』

先程のラント修道師
の言葉で、自分がケ
インにとってのお荷
物、または厄介者で
しかない、と思い込
んでしまったジェル
マ。窓の外のケイン
とサムソンを寂しげ
な瞳で見詰めていた

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