《MUMEI》

ケインは、自分に注
がれる視線を感じ取
り、振り向く。

仰ぎ見る2階の窓辺
には、ジェルマの姿
があった。

しかし、ジェルマは
ケインが気付いた瞬
間に隠れる様に窓辺
から姿を消した。


『…ジェルマ?』

様子のおかしいジェ
ルマの元へと足を運
び掛けて、ケインは
立ち止まる。


…アナタの身体は血
に染まっている…


ラント修道師の言葉
が呪縛の様にケイン
に絡み付く。


『なぁサムソン、俺
はアイツの傍に居な
い方がいいんだよな
ぁ?……』

腕に止まる白い鷹に
問えば、ククゥ、と小
さく鷹は鳴いた。


『お前は、真っ白で
汚れて無いよな…』


シミひとつ無い白い
鷹の躯を撫で、呟く
。その言葉は鷹に向
けられたものなのか
?または違う誰かに
向けたものなのか…


ケインは哀しみを湛
えた瞳で、人影の無
い2階の窓を再び仰
ぎ見た。

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