《MUMEI》

出逢いは、花満開の桜の庭で、 君は 佇んでいたね。

あの頃 僕は 駆け出しの 文芸雑誌の 編集者だった。

そう、君の御主人、坂崎 皇(サカザキ スメラギ)の インタビュー取材が 出逢ったきっかけだったね。

気難し屋の 坂崎の インタビュー許可を 取れて 僕は 張り切って取材に 出掛けた。

アポは 事前に取ってあるから 安心してた。

約束の時間に 訪ねたが 対応に出た 家政婦さんが 済まなそうに 言った。

「旦那様は 只今 執筆中で 誰も 取り次ぐな。と申されて…」

「あの、どうされますか?」

暫く 考えたが

「待たせて頂きたいのですが…」

「はい、結構で ございますよ。紅茶の御代わりを、 お持ち致しましょう。」

「ありがとう。」
僕は、ふと窓の外に 目をやった。

手入れの行き届いた 美しい庭が、広がっていた。

庭の中程に、桜の樹が 今、花満開と 咲き乱れていた。

樹の元に 佇んでいる人を 見て 僕は、心を 奪われた。

着物姿で、美しい長い髪を 風に靡かせていた。

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