《MUMEI》

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坂崎は、菜江が 出ていったのを、確認し…フゥ…と溜め息を付いた。


…何故、俺は菜江に、優しく接する事が、出来ないのだろう。


愛しく思っているのに…。


若く美しい妻…それに引き換え、自分はどうだ。50過ぎの冴えない風貌の、物を書くしか取り柄のない男。


彼は、不器用な人間であった。口で言葉を伝えるのが、下手なのだ。


こんな自分を、菜江は愛してなどいないだろう…


坂崎は、窓の外へ目を向けた。


「??」
菜江と 一緒の青年は誰だ?


「ああ、雑誌編集者か?」


年若い編集者は、菜江と並んでも、違和感なく、坂崎は惨めな気持ちになった。


胸の奥に、モヤモヤした感情が芽生えた。


人は それを嫉妬と呼ぶ。

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