《MUMEI》

「すみません、宇佐美様、お待たせ 致しました。」

暫くして、君が戻って来た。


僕は 君の目が 赤いのに、気付いたが…それには 触れずに、桜を 見上げた。


「花が…」


「はい?」


「花が…狂った様に、散っていきますね。まるで 何かに 急かされて いるように…」


「ええ…本当に…」


二人で、桜を眺めていると…家政婦さんが、やってきた。


「奥様〜風が 冷たくなって参りました。お身体に 障りますので、お屋敷に お戻り下さい。」


「ええ、八重さん、ありがとう。」

「宇佐美様、それでは、私は これで 失礼致します。」


「はい、僕も 今日は おいとま致しましょう。後日 改めて、伺います。」


僕は ゆっくりと庭を眺めながら、門へと歩いた。


桜を もう一度 眺めようと 振り向いた。その視線の先に 屋敷の二階の窓が 写った。


「…??」
君が 此方を 見つめていた。


慌てて 背を向け、再び 歩きだす。が…後ろが、気になり〜チラリと 窓に 目をやる。

「どうして…」お互いの 視線が ぶつかる。


互いに 目を反らし…暫く後…今度 目が逢うのなら、僕は…


宇佐美は 三度〜窓へと 視線を向けた。


「なんで…君も…?」二人は 暫く 見詰め会っていた。


刹那な想いの、始まりであった。


「おい、宇佐美〜ちょっと、こい。」
編集長が 呼ぶ。


「なんでしょうか?」

「お前、この前、坂崎邸に行ったよな?なんかあったのか?」


「いえ、特には〜、待ちぼうけさせられましたが(笑)」


「ふ〜ん、そうか。坂崎氏から指名で、お前を、担当編集者にしてくれとさ。」


「え?僕をですか?まさか…」


「おう、こっちも、新人だからと 断ったんだがな〜是非ともと、言うんだわ、連載切られても困るしな。まあ、ご機嫌損ねないようにしろよ。」


…なんで僕なんだろう?坂崎氏は、何を考えているのか…僕には分からなかった。


「取り合えず、今日の3時に、喫茶「萌木」に行ってくれ。打ち合わせするんだと。坂崎氏が、自ら出向くのも、珍しい事だぞ。」


ますます、僕は困惑していた。

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