《MUMEI》

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「おい〜皇、奥さんを紹介してくれないのか?」


「お前には、紹介せん!」


「冷たい事を言うなよ、我が友よ。」
そう言って、橋元は菜江にウインクした。


坂崎は、橋元の腕を掴み、「おい、あっちへ行くぞ!」と連れ去ってしまった。


後に残された、宇佐美と菜江は…苦笑した。

「橋元先生って、面白い方なんですね。」


「そうですね、僕もお会いするのは、初めてなんですが…」


「あ…と、菜江さん、何か飲まれますか?僕が、取ってきます。」


「あ、いえ…宇佐美様、私は、そろそろ、お暇致します。」


「菜江さん…まだ、早いのでは…。」


そう言い、宇佐美は菜江を引き留めようとした。


菜江は首を静かに横に振った。


「いいえ、宇佐美様。少し疲れてしまったのですわ。慣れない場所と、この洋装に…」


宇佐美は、ハッとして、菜江の顔色を見た。


言われて見れば、仄かに蒼白い顔色だった。

宇佐美は、坂崎に駆け寄り、菜江を自宅へ、送る旨を伝え、足早に菜江の元に戻ると、パーティー会場を後にした。


会場入り口には、タクシーが待機してあり、菜江と共に乗り込んだ。


「すみません、宇佐美様。私は、一人で帰れますから…お仕事されて下さい。」


「いえ、僕は 坂崎先生から頼まれていますから…大丈夫ですよ。」


宇佐美は、菜江を1人でなど、帰せるはずがなかった。

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