《MUMEI》

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「あの写真って、まだあるかな?」


「さあね〜引っ越したから、無くなっちゃったかもね。」


母は面倒くさそうに答えた。


「ふ〜ん、そっか〜。あ、ねえ お母さん、なんで再婚しないの?まだ、お父さんの事を好きなの?」


母は、驚いたように私を見た。


「ねえ、愛紗〜あなた誰か好きな人が出来たの?」


「え?なんでよ、別に…。」


「今まで、そんな事を聞いた事なかったじゃない。やっとその気になったか。」


「ばっ…違うし…。」
何故か〜留王の顔が浮かんだが…慌てて、かき消した。


押入れや物置を、探したけど〜写真は見つからなかった。


「やっぱ…ないか。」


父の写真が、一枚出て来た。私を膝に乗せて笑ってる。


…幸せの残骸〜写真は残酷だ…もはや形すらない愛情が、刻印のように張り付いていて〜私を嘲笑う。


私は〜写真を引き裂いた。あの頃の記憶など、私は…要らない。


…あなたなんか〜いらない。


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