《MUMEI》

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「愛紗が、何の過去に縛られて、心を封印してるのか〜俺は知らない。


ただ、余程の事があるんだろう…。でもな、愛紗、そろそろ自分を許してもいいんじゃないか?」


「佐伯…私…。」


「それから、もう愛のない行為は止めろ。自分を傷付けるだけだから…」


佐伯は、笑って私を抱き締めた。


「俺も、愛紗から卒業するかな…」


「佐伯?…」


「俺な、お前に逃げてたんだ…。」
そう言って佐伯は、昔話をした。


若い頃〜ワンマン社長で、悪どい手を使って会社を大きくした事、恨みをかって、子供を殺され、妻は精神を病み、病院にいる事。


「何もかも、失って自暴自棄になった時〜お前に出逢った。同じ目をしたお前に救われた。」


「……」


「妻が死んだなんて嘘だ。でも俺は、死んだ事にしたかった。最低だろ…俺は…」


佐伯は…愛し方を間違えたんだね…家族の為だったのに…


「妻が…現実を取り戻せそうなんだ…俺は、アイツの傍に居ようと思う…。」


「うん…そだね、佐伯。」


「愛紗〜お前も、自分に正直になって見ろよ…。」


「……」


「大丈夫だから…」
佐伯は、そう言って頭を優しく撫でた。


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