《MUMEI》

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「昌利(まさとし)さん…。」
留王が、父の名前を呼ぶのを、ボーッと見てた。


…留王が言った事も、父が言った事も…頭の中で整理仕切れなかった。


ただ、ただ…私は傍観者だった。


「愛紗?」
父が私の名前を呼んだ。


「……」


「…かな…いで…」


「何?愛紗?」
父が問う。


「私…いかないでって言ったのに…あの日、お父さんが出て行った日…」


「愛紗!」
父に抱き締められて、私は思い切り泣いた。


父も、泣いていた。何度も「ごめん。」と呟きながら…。


私は…父が大好きだったのに…。


私の愛は、いつも空回りするみたいだ…。


そして、泣き止んだ私は、病室を後にした。


「愛紗…。」
背中で留王の声がした。


「……」
今は何も考えたくない…ゆっくり眠りたい。


自宅に着くと、泥のように眠った。母の声で目覚めるまで〜


「愛紗〜愛紗!起きなさい。いつまで寝てんの?休みだからって。」


「下へ降りて来なさい。」


渋々〜ベッドから抜け出す、鏡を見たら物凄い顔になっていた。


…目が腫れてお化けみたい…。お母さん、驚くよね…理由聞かれても困るし…



考えてると、コンコンとノックの後に母が入って来た。


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