《MUMEI》

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…その日は、雲ひとつない澄みきった青い空だった。


…留王…私は彼の名前を呼んだ。


彼は…私の手を握り、頷いた。


手術中の文字が灯り、長い時間が流れた。


留王のお母さんや(私の)お父さん、そして私、皆 無言で〜その時を待った。


手術中の文字が消えた。


ガタッ…
皆、立ち上がり〜手術室の前に集まった。


ドアが開き〜留王を乗せたストレッチャーが出て来た。


「留王…。」
傍へ駆け寄る私を、看護師さんが制した。


術着の医師が出て来て告げた。
「手術は成功です、良く頑張りましたよ〜彼は…」


三人共に、頷き喜びあった。


…》》数年後《《…



「そろそろ、時間よ。」


「はい…。」


私は、促されて静かに立ち上がり〜裾を踏まないように、ゆっくりと歩き始めた。


視線の先には〜黒のスーツに身を包んだお父さん。


私の手を取って、歩き出した。


雲1つない秋晴れの、今日…私は留王のお嫁さんになる。


一歩ずつヴァージンロードを歩き、留王の手を取り、神父様の前へ進み寄る。


「汝は〜健やかなる時も、病める時も、嘉山愛紗を妻とし〜愛する事を誓いますか?」


「はい、誓います。」
留王が答える。


「汝は〜健やかなる時も、病めるときも、伊東留王を夫とし〜愛する事を誓いますか?」


この日〜愛されても、愛する事の出来なかった愛紗(わたし)は…神の前で……



『愛する事』を誓った。



…完。

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