《MUMEI》

「どうしてそうなるんですか。」

この人は突拍子の無い発想がよく浮かぶものだ。


「だって、音信不通だったのに帰省してるし。
過去の清算しに来たんだろ、最初は一人かなと思ってたんだけど、ポケットに飲み物が二つある、つまりは誰かと来ている……という勘。」

誰かと来たのは正解、鋭い勘だ。


「いや……まあ、そうですね。恋とかじゃないんですけどね。ただの、実家へ帰省です。」


「またまたあ、初恋の未練断ち切りに来たんだろ?
で、あわよくば昔の自分も許して貰おうと考えていた……そんな上手くはいかなかったけど、俺の二郎にはすっきり諦めついたんじゃない?
昔のお前のことを構う余裕俺達には無いよ。自分の意中の相手にそういう面倒は押し付けるんだな。」

言いたい放題だ。


「……前向きで時々、うざったいと言われてるでしょう。」


「乙夜みたいなこと言うなよ、お前って可愛げない後輩だよな。」


「先輩が幼いだけです。」


「いやいや、お前がジジむさくなったんだろ。髭くらい剃れよ。」

髭は関係ないと思う。

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