《MUMEI》
遊園地ー観覧車・秋葉&歩雪ー
「オレら先乗ってるな!!」

「んじゃあお先に〜」

紘と今宵は観覧車のカプセルへと入った。

あんなにはしゃいじゃって・・・・・。

やっぱあの2人は同レベルね。

「どうそ〜!!空の旅を楽しんできてくださいね!!」

係員はにこやかに秋葉と歩雪に声をかけると、カプセルのドアを開けた。

観覧車なんて何年振りかしら。

小さい頃はよく乗ったけど。

秋葉がカプセルに入ると、続けて歩雪が入って来る。

2人が向かい合わせで座るのを確認すると、ドアが閉められた。

秋葉は、窓の外の少しずつ変わっていく景色を見ながら歩雪に声をかける。

「こんなの乗るなんて久しぶりじゃない?歩雪くん」

「ん。小さい頃、こーに無理矢理乗せられてたけど」

「雪村ならやりそうね!!」

「あの頃は振り回されてばっかだったから。今もだけど」

歩雪は呆れながら言う言い方であったが、表情はとても優しいものだった。

歩雪くんがこんな顔するのは、雪村のことだけよね。

最近はあたしやコトにも普通に話してくれるけど。

「あ」

「何?」

歩雪の視線の先には、1つ前のカプセルに乗っている今宵と紘が並んでいた。

2人とも大きく両手で手を振っている。

「バカね。何やってんのかしら・・・・・・」

「ホント」

歩雪と秋葉は呆れつつも、2人に向かって軽く手を振った。

これに気づいた2人は思いっきり手を振りかえす。

次の瞬間。

「あははは!!やっぱバカじゃない!!」

「・・・・・・琴吹は災難だけど」

歩雪達は思わず吹きだした。

前のカプセルの中では、まだ今宵が紘に謝っている。

先ほど歩雪達に大きく手を振りかえしていたが、勢いあまって今宵の手が紘の頭に直撃したのだ。

「あーあ、ホントに何やってんだか」

歩雪が今宵をの姿を愛しそうに見つめている。

この目・・・・・・。

もうまるっきり想いが通じ合ってるじゃないの。

やっぱり今あたしは踏み出しておいた方がいいわね。

「歩雪くん」

歩雪は秋葉の声に気づくと、正面を向いた。

「あたし・・・・・・歩雪くんが好きなの」

言えた・・・・・・。

秋葉は歩雪の目を逸らさずに言った。

歩雪は静かに口を開く。

「ごめん。オレにはずっと一緒にいたい人がいるから」

「・・・・・・イヤだ、歩雪くん!!気にしないでよ!!」

大丈夫。

もう覚悟は出来てたじゃない。

秋葉は俯きそうな顔を上げて笑う。

「ホントに気にしないでよ!!その代わり雪村のこと大事にしてあげて。じゃないと許さないから!!」

「・・・・・・うん。ありがと、波坂」

歩雪は秋葉に笑いかけた。

もう、これで充分。

あたしにこんな風に笑いかけてくれたんだから。

「もう、余所余所しいんだから!!いいわよ、秋葉で。スッパリキッパリ友達になったんだから!!ね、【歩雪】!!」

「わかった。ホントにありがと。【秋葉】」

歩雪はもう一度秋葉に笑いかけた。

本当に自然な笑顔で。

「もう!!照れるじゃない!!」

「自分で言ったんでしょ」

これで本当に【好きな人】から卒業して【友達】になれた。

【歩雪くん】から【歩雪】に。

まぁ、これはこれで雪村に変な誤解招きそうだけど。

これぐらいは許して貰っても罰は当たらないでしょ。

もしかしたら鈍感な雪村の刺激にもなるかもしれないし、ね♪

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