《MUMEI》

Mix巻のふわふわとした黒髪。
鋭く尖った漆黒のまつ毛。
アイライナーを巧みに使って完成された、丸く大きな目。
ファンデーションで綺麗になった肌。
ほんのりとピンクになった頬。
ツヤツヤと輝く青みピンクの唇・・・・・


なんだか鏡に移っている自分が、自分ではないような気がした。

「こんなに変わっちゃうもんなの・・・?」

「 まあね。私の腕にかかったらどんな子でも可愛くなれる。・・・・と言っても、ここまで可愛くなったのは、怜の元の顔がめちゃめちゃかわいいからだけどね」

優子が自慢げに言った。私は顔が赤くなった。

「嘘でも褒めてくれてありがとう」

「あー、もう、何でそういう考えになるわけ?」

優子は私の頭を叩いた。

「あんたが可愛くなかったら、世の中の女子のほとんどが、人間以下になるってことだよ?いい加減認めたらいいのに」

優子は半ば面倒くさそうに言った。
私は優子の発言を無視する。

「でもさ、何で家にいるのにこんなことしなきゃいけないの?」

待ってました、とばかりに、優子は顔を輝かせる。

「徳山にあんたの家がばれたら嫌かな、と思って、公園で練習することにした」

ニヤニヤと笑う優子に私は苛立つ。



悩んじゃったじゃんよ・・・



「じゃあ、このワンピースは着ないから」

「は?何言ってんの?着るに決まってんじゃん」

優子は呆れた顔で私を見た。
私は激しく首を横に振る。

「絶対に嫌」

私は優子を部屋から出させようとするが、なかなか動いてくれない。

結局私はあのガーリーなワンピースを着るハメになるのだった・・・・。

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