《MUMEI》 「あのな千葉…」 沈黙の流れるロビーの中で、 監督が口を開く。 「いや…言わなくていいす。 もう… 大体わかったんで…」 「…そうか。」 …………… 誰もが同点になるであろうことを信じて疑わなかったその瞬間… 恐れていたそれは起こった。 千葉は倒れ、 意識を失った。 それまで磨ぎ澄まされていた緊張の糸が、 切れてしまったのだ。 北農・聖龍との試合で動き回った彼の体力は、 限界などとうに越えており、 クロたちを含めた観客たち全員が同点を確信した瞬間、 彼もまた、 それを確信したのだ。 そこで、 彼の緊張は途切れる… 海南の選手たちは善戦したと言えよう。 千葉が退場したその後も、 決して試合を投げることはなかった。 が、 エースを失った海南に決定打はなく、 残された主力選手である一ノ瀬未來が奮闘するも、 31対27というスコアで高校生活最後の試合は幕を閉じた。 …………… (何やってんだ俺…) 前へ |次へ |
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