《MUMEI》 サプリ邸「…ん…?」 いつの間にか、頭の下には枕が入り、布団を耳まで被っている。 「…」 寝ぼけた頭のまま、ぼんやりとうつぶせていた身体を両腕だけで持ち上げる。 背中を反らせながら、枕をじっと見つめ、はたといつも使っている枕では無いことに気がつく。 「…あれ?ここは…?」 きょろきょろと周りを見渡して目を見開いた。 「…え?」 ベッドと机しかない狭い寮の自室にいたはずなのだが、 そこは12畳ほどの広さはある部屋で、シングルと呼ぶには少し大きいように見えるベッドが、自分の今いるものと合わせて2つ、 シンプルな丸いテーブルと椅子、それから小振りのチェストが置かれていた。 しばらく状況把握をしようと寝起きの頭をフル回転させ、ようやくフェル界に来なければならないと言われていた事を思い出す。 じゃあ、ここはフェル界なのか? と思いながら、ふと枕許にタンポポ色の布とその上に茶色の細い布がたたまれて置いてあるのに気付いた。 「?」 疑問に思いつつベッドから抜け出して床に降りてみる。そこで、自分が持っていない服に身を包んでいることに気がつく。 深緑色のピタッとしているのに圧迫感を感じない素材のタンクトップに、寝ていたのに皺の入っていないタンクトップと同じ色のズボン。 「…??」 着替えた記憶は無いから、誰かに着替えさせられたのだろうか、それとも魔法か? 前者だったらかなり恥ずかしいな。 などと思いながら、恐らく枕許の黄色と茶色の布も自分が身に付けるものなのだろうと判断し広げてみる。 タンポポ色の布は雅俊の想像通り上着で、はっぴの様な形をしていた。しかし羽織ってみると、前を合わせるには少々布が足りず、裾がやけに長い。 しばらく考えて、帯の様に使うのだろうと思われる茶色い布を上着の上から腰付近に巻いて、上着を適当に帯から引っ張り上げて緩く着こなした。 眼鏡が近くに見つからなかったので、ベッドのある壁とは反対側の壁に近づき目を凝らす。 目的の物を探すと壁の右端に、壁と同じ色のドアの様なサイズの線を見つける。 「もう少し主張しろよな…」 ドアだと思われる線に文句を言いながら、近づくと勝手に線の中の壁が消えた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |