《MUMEI》

「…眼中ね〜んだよカス。」



顔を合わせずにそう呟く日高。



「…よく言うぜ。」



返す大地。



「しかし…


赤高のコーチさんは若いんすね〜。


いいな〜楽しそうで。


二十歳くらいっすか?」



クロを見てそう言った。



「うん。ジャスト二十歳。」



答えるクロ。



「黒田小太郎。」



大地とは別の声が聞こえた。



「…2年前の赤高の正サイドでずば抜けたスピードとパスセンスが光ってた。


今は海南クラブに所属しててポジションは変わらず正サイドのまま。


社会人リーグの3部でベストセブンにも選ばれてる。」



声の主はクロたちの歩く通路に対面する位置にいた。


1人ではなく、


3人組。



「…随分僕のこと詳しいね。


もしかしてストーカー?


悪いけど男には興味ないよ?」



そう言ったクロの視線の先には、


秀皇大附属高校主将。


キーパーの上野がいた。


3人組の中央に立っている。


その両隣には、


No.1ルーキーと名高い市原と、


要大地の弟にあたる要義人。



「別に。
有名な選手だから知ってるだけですよ。」



「そりゃ光栄だ。」

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