《MUMEI》

「コーチ業は今年から?」



「さてね…」



「市民体ん時にはベンチ座ってましたよね。」



「どうだったかな。」



「隠してもダメっすよ。


海南戦のオールコートマンツー。


あれが印象的だったから覚えてます。」



「ありゃりゃ。ばれたか。」



クロに探りを入れる上野だが、


淡々と返すクロの考えは読めない。


クロは軽く上野をあしらっていた。



「お前らさ〜。」



横から口を挟む義人。



「練習試合でウチに勝ったからってあんまいい気なんなよ?


あん時俺いなかったし。


締めてかかって来ないと屈辱的なスコアにしてやっから!!」



「ニャハハハハッ!!!!!」



義人の言葉に笑う大地。



「あ、ちなみに俺もあの時はスタメンじゃなかったんでよろしくっす〜。」



便乗する市原。


完全に天狗になっている彼らの鼻を言葉でへし折ったのは、



「…良いこと教えてあげるよ。」



やっぱりクロだった。



「?」



「さっき言ってたオールコートマンツー。


海南には有効みたいだよ。


仕掛けてみるのも手だと思うよ。」



「は?」



上野以外の全員が反応する。



「明日の参考にして損はないんでない?」



「参考?」



クロはこの後の言葉を言うつもりはなかったが、


意外にも村木が付け加えて言った。



「3決で海南と試合するんだろ?」



「ッ…」



「ぷ…」



「くははははッ!!!!!!!!」



「最高村木ッ!!」



笑い出す赤高選手陣。



「んじゃあ試合で…ね。」



クロはそう言い残し、


笑顔で去った。



「…ムカつくチームだな。」

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