《MUMEI》 クロのシナリオ県営武道館1階。ロビー。 「あと20分くらいかな?」 ロビーにはクロ・佑香・安本の3人の姿があった。 選手たちはまだ準備中。 ヤマトと恭介、 美紀と理紗、 赤高マネージャー2人、 海南クラブたちは観客席からの応援である。 「何がですか?」 「試合。」 「あぁ… たぶんまだ始まったばっかりだと思いますよ。」 「盛り上がってんね〜。」 クロたちが待つロビー。 準備を最初に終え降りてきたのは千秋だった。 「千秋が1番か。」 「はい。 皆トイレ行ったりテープ巻いたりしてます。 村木さんは相変わらずビデオ見てましたよ。」 「熱心だね…」 (けど早く降りろって言ってんだから早く来いよ…) 「緊張は?してる?」 問い掛けるクロ。 「そうですね…」 答える千秋。 「そかそか。」 クロは何故か笑顔だった。 「?」 「試合前に緊張できりゃ〜スポーツマン。 ベンチに座ってるだけとか、 応援してるだけの奴とかじゃその緊張は味わえないんだよ。」 「…ですね。」 クロの言葉の意味。 それは千秋にしか理解できなかった。 数ヶ月前、 そこから逃げ出そうとした千秋が、 今この舞台に立とうとしていること。 続けて良かった… 千秋はそれをひしひしと感じていた。 前へ |次へ |
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