《MUMEI》

「確かに…


スタメンの出場率が高い割に攻撃が単調すぎて見えてくる情報が少ない。


目立つ情報はキーパーがやたら止めるってことと両サイドの足がめっちゃ速いってこと。


そりゃ間違ってない。」



頷く選手たち。



「だけど細かく見ると速攻から見えてくる情報はそれだけじゃない。


カバーに走る存在。


これが重要。」



「あ…」



気付く椎名。



「そっか…
そういやあいつらの速攻の後には絶対市原が走ってた…」



「そう。
ポストの市原がカバーを怠らない選手ってのがわかる。」



「けどそれがわかったって何てことないんじゃ…」



「まぁね。


単純に見りゃ市原がいい選手ってくらいにしか見えない。


けど裏を返せば他のフィールダー3人は何やってんのかって疑問が生まれる。」



「?」



「速攻は両サイドに任せて自分たちは待ってるだけ?


うん。


実は全くその通り。」



「はぁ?」



「両サイドに絶大な信頼を置いてるのか…


あるいは作戦上体力温存に務めてんのか…


はたまたただのサボりなのか…


考えられる可能性は今の3つぐらいなもんだけど2つ目の線は1番ありそうで実はない。」



「何でですか?」



「全体的にプレー数が少ない。


体力を温存しなきゃならないほどの運動量があいつらにはない。


たぶん正解は両サイドが決めるって信じてるってのを言い訳にサボってるってとこだね。


ありがちな話だよ。」



「…」



ここまで、


クロの説明に反論の余地はなかった。


誰もがそういった理由からカバーを怠った経験があったからだ。



(相変わらず…)



(すげぇ視点…)



誰もがクロの話に聞き入っていた。

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