《MUMEI》 新学期…コンコン 「失礼しまーす。」 新学期の始まる始業式が終わったばかりの放課後。 結局、山男に生物を教わることになってしまった雅俊は、春休み中に信じられない量を出された生物の課題を持って生物準備室に来ていた。 「お、進級おめでとう。」 雅俊の通う学校の制服は、進級するたびにネクタイのラインが増える。 雅俊の覚醒後、3月まで何度も顔を合わせて見慣れていたラインよりも一本増えたそのラインを見た山男は開口一番お祝いの言葉を投げかける。 「…ありがとうございます。はい、これ。」 「あぁ、…あんだけ出したのに、ちゃんと提出日に出せるんだな。もう少し出せば良かったか。」 「勘弁してくださいよ。他の教科の課題だってあるってのに、大変だったんですから。」 ニヤリと意地悪そうな顔で笑う山男に、遠慮無く眉間にシワを寄せながら抗議する。 実質的には、雅俊は他の誰よりも多くの時間を過ごしている。 スレシルとなり、魔力の影響からフェル界の時間の流れに引っ張られている身体に対して、適合魔法によって魔力を馴染ませ、時間の流れを人間の住むこの世界のものに戻すために、1日の3分の2をフェル界で過ごしている。 フェル界は、人間界に対して5倍の早さで時間が巡るため、学校に通う時間の朝8時から夕方の4時まで以外の時間全てをフェル界で過ごす。そして、そのフェル界では残りの16時間に掛ける5、つまり3日間ちょっとを過ごし、再び学校に通う。 結果、雅俊は普通の人が1日を過ごす間におよそ4日間の時間を経験している。 が、フェル界へは身体一つで移動する。それこそ何も持ち込む事が出来ないため、学校の課題は戻ってきている8時間のうちに全てやってしまわなければならない事態に陥っている。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |