《MUMEI》

くるみはソファーに座っていたジェイミーに近づいていくと、膝に座って物珍しそうに手元のグラスの中を「変なにおい〜」と言って飲んでしまうんじゃないかというくらい覗き込んでいた。

「ウェイスーチー(ウィスキー)だよ」
「うぇい?すーち?」

そう言いながらジェイミーは子猫のように顔を近づけていたくるみにチュッとキスをすると、くるみは嬉しそうに顔を両手で覆い子供らしい笑い声を上げてはしゃいでいた。

「くるみ、もう寝る時間は過ぎただろ大丈夫か?」
「ありぇ?もーお昼なの〜?」

はしゃぎ廻るくるみを捕まえて抱き上げると、時計の方を指さして真上に集まった時計の針を見ながら首を傾げていた。

「お昼の逆だよ、おチビさんがよくこんな時間まで起きられるね♪」
「ぁ〜?」

そうソファーに座るジェイミーに言われると、突然くるみは思い出したように目を擦りはじめた。

くるみは眠くなるともどかしそうに手足をモゾモゾとさせて子犬のように舌を出すクセがあり、だんだんいつも通り眠そうに身体をユラユラと揺らし始めた。

その通り、俺の肩に頭をもたれかからせると鼻先を舐めようとしてペロペロと舌を出し始めた。

「ほら眠いんだろ、もうベッドに入ってる時間だぞ」
「ぅにゃ…///」

俺に抱きついていたくるみの小さなその手に握られたぬいぐるみが、眠くなって力が抜けてその手から落ちた。

「あ〜ん、おりぇの…」

あきらはくるみが落とした人形を拾うと、にっこりと微笑みながら可愛らしくくるみと鼻先をくっつけあっていた。

「くるみちゃん、ねんねしようね…」
「ぅん〜」

俺の腕の中で半分眠りかかっていたくるみを受け取ると、いつものように子供部屋に寝かせに行った。



部屋に残された俺とジェイミーだけでお互いに微妙な距離を取りながらソファーに座り、深夜のテレビを眺めていた。

「…ジェイミー」
「なあに?」

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