《MUMEI》

俺が口を開くと、ジェイミーはまるで子供の話を聞く母親のような声で聞いてきた。

それにちょっとモヤモヤしながらウイスキーの入ったグラスを傾けると、今回ジェイミーを呼んだ目的を確認するように話しはじめた。

「お前はアキラへのプレゼントなんだからな…」
「分かってるよ〜」

バスローブからスラリと伸びた足が組み替えられると、裾側からチラリと白い太股が見えた。

つい手を伸ばしたくなる衝動を抑え、そのまま話を続ける。

「アキラの事を助けてやって欲しい、お前はココの事詳しいよな」
「うん…」

アキラはココに来て四ヶ月。

慣れたと言ってもくるみのような小さな子供を抱えていては大変だろうから、俺では足りない部分をジェイミーに補ってもらおうと思ったのだ。

「で…僕はアキラの愛人で、アンタはアキラの旦那って事だよね」
「ん、ぅ…ん」

少々引っかかるが、ジェイミーはアキラに対して女役なのでその辺はバッティングはしないので大丈夫だろう。

多分な。

「それとジェイミー…分身はドイツ語で”アンデレセルヴスト”だ、アレスクラァ?(分かったか)」
「ヤ、ビッテ…(はい、分かったよ)」
「う…お酒の匂い」

ふと横を見ると、くるみを寝かしつけて戻ってきたアキラが顔を手で覆いながらこちらを見て立っていた。

リビングにほんの少し漂っていたウイスキーの香りに反応したのだろう。

以前も香りだけで酔っていた事を思い出した、それにしてもどれだけ弱いのだろうか…。

俺がアキラくらいの頃には…。

「アキラはお酒苦手?」
「うん…というかまだ未成年だし」
「そうだったねぇ…」

日本はアメリカと同じ”お酒は二十歳になってから”だったな…。

俺がこっちの大学に通うようになった時には、すでにこちらでの飲酒可能年齢に達していたので何も言われなかったが…。

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