《MUMEI》

時々こっちに帰って来た時には、普通に飲んでいたし飲まされてもいたワケで。

その辺、さくらは何も思わなかったのだろうか。

…そういえばさくらは、そんな事を気にするような母親ではなかったな。


「あの…克哉さん…」
「何だ?」

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「キッチンにトリスタンさんの置いてったのが色々とあるんですが…」

キッチンを片づけているとトリスタンさんがケーキを作ってくれた時に置いていったと思われる道具一式とか、色々と気の利いた調理器具なんかが所々に散らばっていた。

「どうやって返したらいいですかね、住所とか知ってますか?」
「あぁ…それなぁ」

一カ所にまとめていたそれらの道具に手を伸ばすと、克哉さんがしなくていいというような仕草をして僕の手を握ってきた。

「トリスタンが置いとけってさ…」
「そう…ですか」
「…アイツの事だから、少しづつ自分のカラーに染めて行こうって魂胆なのかもな」

そう言うと克哉さんは、昔トリスタンさんが克哉さんの部屋をトリスタンさんの好きな色に模様替えしていっていたり、時々勝手にベッドで寝ていた事なんかを僕に話してくれた。

「いつの間にか知らない家具とかカーテンが増えたりするんだぞ…」
「僕は、それでもいいですよ」

だってトリスタンさんは悪い人じゃ無さそうだし。

僕もこっちに来てからキッチンで何を揃えていいか分からなかったから、こうやって揃えて貰うのは結構助かるし。

それに、トリスタンさんには色々と教えて欲しい事もあった。

…克哉さんの事とか。



「あの…」
「ん、何だ?」

キッチンの上の棚にケーキの型やボウルを片付けている克哉さんに話しかけると、紙の包みを渡した。

さっきくるみちゃんを寝かしつけた後、僕の部屋に行って隠しておいたプレゼントを部屋の隅に置いてある僕の鞄から出してきたものだ。

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