《MUMEI》

普段、克哉さんは掃除好きだからこの部屋にも入ってきて掃除をしていたりするので、それが出来上がるまで隠しておくのが大変だった。

そんなクリスマスまで隠しておいた、克哉さんへのプレゼント。

「あのコレ…作ったのは初めてなんですけど」
「俺…に?」

一人で街を歩いていた時に克哉さんのイメージに合うような色の布を見つけて、なんとなく作ってみようかな…と思ったのだ。

帰ってから克哉さんのクローゼットから拝借して、それを参考にしながら色々と試行錯誤して、昨日の晩ようやく出来上がったのだった。

「ネクタイ、か」
「はい…あ、克哉さんに合うかな…と思って」
「中はぎもあるなぁアキラ初めてだろ、よく作れたな」
「はい、作り上げられるかどうか不安でしたが…」

布が一本になっただけのネクタイなら簡単だと思って作り始めたら、案外面倒な構造になっているらしい。

全面に出るものと、首に巻く細い部分の間に繋ぎの布があって、斜め四十五度に重ねて縫っていく。

その複雑さに何度か挫折しかかっていたのだけど、諦めずに出来損ないの頭を使って考えてようやくネクタイらしいものが出来上がったのだった。

「どうやって結ぶんでしたっけ?」
「ん…回すんだよ、逆だ」

克哉さんは背が高いから、襟元がちょうど僕の目の前辺りに来る。

いつも話す時に目を合わせるのが恥ずかしくなってしまうのでつい胸元を見てしまうのだけど、その方が数倍恥ずかしくなる事もあった。

高校の頃の制服はネクタイだったけど、人にネクタイを結ぶのはあまり慣れていなかったのでモタモタしていると克哉さんが僕の手を握ってきた。

「ありがとう…」
「え///…ぁ…どういたしまして///」

僕にはこれしか出来ないから…。


やっと綺麗に結べた結び目をキュッと締めると、そのネクタイは思いのほか厚手になってしまっていた。

「…冬用のネクタイですね///」
「そうだな、今の季節に丁度良いよ」

そう言って克哉さんは僕の背中に腕を廻してくると、背中を撫でながらギュッと僕を抱きしめてきた。

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