《MUMEI》

それが何なのか、確認する間もなく爆発音が響き渡る。
一瞬、爆弾を投げたのかと思ったが違うようだ。
音は響けど、何かが吹き飛ばされる様子はない。
パニックを起こした聴衆が悲鳴を上げながら椅子を蹴散らしているくらいだ。
「爆竹かよ」
軽く舌打ちしてユウゴは視線を戻した。
警護の男が倒れた実川の横にしゃがんでいる。
実川の体はピクリとも動かない。
その体の周りに赤い液体が染みているのがわかった。
間違いなく、死んでいるだろう。
「よし、行くぞ。ケンイチ」
ユウゴが声をかけた瞬間、銃声が響いた。
反射的に身を屈めたユウゴはすぐに周りへ視線を走らせる。
するとユウゴのすぐ後ろで黒いスーツの男が倒れた。
見たことのない顔だ。
そう思って会場の出入口に目をやると、外から黒いスーツを着た男たちが五、六人走り込んできていた。
「やっぱし、警護は準備してたみたいだな」
手に銃を構えたケンイチが楽しそうに言う。
「これ以上増えると厄介だ。逃げるぞ」
ユウゴは言ったが出口には警護が銃を構えて逃げる聴衆をせき止めている。

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