《MUMEI》
困惑
『ツヅ!起きて。朝だよ』
「……ん…」
『ツヅ〜朝だって!学校遅れちゃうよ〜』
「……フォン…?」
『そうだよ。どうしたの?熱でもある?』
「いや…熱は…ないと思うが…」
『そう?…心配だな…まぁ、熱がないんだったら早く起きて。ツヅ…ホラ』

そう言って手を差し出してきたフォン。私はいつものようにその手を取ろうと……

「「本機は着陸体勢に入りますので、ご乗客のお客様はシートベルトをお付け下さい」」

――ハッ!!……

唐突にアナウンスの声が私の頭の中に入ってきた。
気付いたらそこは飛行機の中。
私は機内で眠っていたみたいだ。
アナウンス通りシートベルトを付けて、先日の事を思い出していた。

私が幼い頃から住んでいた家、ネビスト家は、空港とは遠く離れていて、田舎当然の所に建っていた。
だから家を出てから空港に行くまでの道程が長くて、やっと空港にたどり着いたて、日本行き飛行機に乗った時に、つい疲れて寝てしまったのだ。
…これでは自己防衛がなっていないな。機内でスリにでもあったら、たまったもんじゃない。
どこにいても油断ならない。私は誰も信じない。

幸い、財布などの金目な物はとられていなかった。けれど不幸なことに、日本へ着いたとき、ホームステイをする事になっていた家の住所を書いた紙がなくなっていた。
これは多分…というか確実にスラれたものじゃないと思うから、きっとどこかに落としたのだろうと思った。

飛行機が着陸して、乗員の人に言って一緒に探してもらったが……

…なかった。機内のどこにも。やはりイギリスに落としたのだろうと考え直して、今更戻るのも無理なので諦めた。

「…困ったな…」

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