《MUMEI》
出会い
飛行機を出て、日本の空港内に入った。
やっと故郷に着いたな、と思う反面、これからどうすれば?と多少困惑気味に思っていた。

イギリスのネビスト家に連絡をとろうかと思ったが、勢いよくフォンやフォンの両親の反対を押し切って日本へ来てしまったので、今更連絡なんてとれっこない。
これは私のプライドだ。

「……はぁ…」

深いため息をつく。
旅行やらなんやらで人がごったいがいしになったロビーで独りただずむ私。
なんとかホームステイをする家の名前を思い出そうとするけど…そう簡単には思い出せない。

「…き……き、き…」

[き]がついていたような気がするのだが…
なんとか思い出そうとするが、思い出せない。

ついには思い出せなくて、諦めてロビー端のベンチに腰を落ち着けた。

「………」

自分が情けない。不甲斐ない。
これじゃ迷子同然だ。
大事なメモを落とすなんて、バカにも程がある…。

私は幼かったあの頃と何も変わっていないんだ…。

暗い気分になって俯き、自分の惨めさに悔いていた。

そんな時だった。
一つの声が私にかかったのは…

『…すみません。…貴方が想井(おもい)ツヅキさんですか?』

流暢な英語でそう問い掛けてきたのは、私よりも少し背の高い黒髪の少年だった。

「え…私…?」
「!…あ、すみません…日本語が話せるんですね」
「…はぁ……所で、何故私の名前を…?」
「すみません。自己紹介が遅れてましたね。…僕は、友知(ともち)スナオって言います。ホームステイされる方の到着が遅いと思いまして、迎えに来ました」
「…と、いうことは…私がホームステイをする所は…トモチさんの?」
「スナオでいいですよ。…けれど、残念ながら違いますよ。想井さんのホームステイ先は…」

「俺んち」

そこでスナオの言葉を遮って、無愛想な声が挟んできた。

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