《MUMEI》

 「で?これから何所に行くつもりだ?」
ウェスト・グリードを出て道中
次目指すべき場所を決めていなかった事に気付き、エイジは脚を止める後ろをゆるりついて歩くアリスへと向いて直って見れば
手に入れたばかりの鐘をまじまじと眺め見ていた
見る事ばかりに集中していると転んでしまう、と注意を促してやれば
アリスは若干はにかんだような表情でエイジへと鐘を鳴らして見せる
透き通った水の様な音色
ソレは耳の奥に微かな余韻を残し、そして消えて行った
いい音だと褒めてやれば
どうしてかアリスがb照れた様な表情で、あからさまにエイジから視線を逸らす
「……もう行くよ」
何を返す事もしないまま踵を返し先を歩きだすアリス
そのすぐ後に
アリスの目の前に突如巨大な影が現れた
空を仰ぎ見、それが何かを確かめてみれば
そこに在ったのは大鷲
その姿を見るなり、アリスの表情が強張った
「……あの子――」
アリスの頭上から決して離れず、唯其処を旋回し続ける
どうしてかすっかり動揺し始めてしまったアリスがその場へと座り込む事をしてしまえば
目の前へとその鷲が降りてきた
アリスのなを声でない事の葉で呼び、そして
もう全てが終わるのだと告げてきた
「……それを態々言いに来たの?暇人だね」
エイジの腕を借り、何とか立ち上がり対峙すれば
その羽根が突風を起こす
舞いあがる砂埃
視界に霞がかかり、瞬間全てを見失ってしまった
「――!」
羽音が派手に響く中
、エイジは自身のなを呼ぶ声を聞いた気がして
漸く砂埃も消え、辺りを見回してみれば
だが其処に誰の姿もなかった
「……アリス?」
見えなくなってしまったその姿を捜し、視線を巡らせる
何度見回して見ても見つける事は出来ず
その変わりに、アリスが立っていた筈の其処に、彼が持っていた鐘が、落ちているだけで
アリスの姿は跡形もなく消えてしまっていた
「……アレは、世界の柱。あれが消えれば、世界は終わる」
呆然と立ち尽くすエイジの背後
気配が突然に現れ、身をひるがえした先に
見知らぬ女性が立っていた
「……世界は、まだ終わらせるべきではない。今は、まだ」
言葉の最中、女性はゆるり指を指し示す
そちらへと向いて直って見れば
だが跡形もなく、代わらない景色が其処に広がるだけ
困惑気な表情を浮かべて見せるエイジへ
「……耳を、澄ましなさい。そうすれば、行く道は決まる」
それだけを告げると、女性は踵を返しその場を後にしていた
アリスの姿も其処にはなく
呆然とその場に立ち尽くす
「ね、マリス。アリスが捕まったって話知ってる?」
「うん。知ってる、知ってる。ラビ様すごく怒ってたって」
「アリス、どうなっちゃうのかな?かな?」
「もしかしたらラビ様に殺されちゃうかも」
暫くそのままだったエイジの背後
子供の賑やかで無邪気な声が突然に聞こえ、つい振り返ってみた
「……お前ら、何か知ってんのか?」
其処に居たのは双子の兄妹
エイジをまじまじと眺め、そして何故か満面の笑みを浮かべて見せる
「これ、どうぞ。オジさん」
笑みはそのままに手渡されたソレは一通の手紙
突然のソレにエイジは怪訝な顔
だが、今手がかりはそれしかないのだと封を切った
中に入っていたのは、何も書かれていない白紙の便箋
一体これが何だというのか
問い質そうとした瞬間
エイジは頭の奥に、鐘の音を聞く
始めは穏やかでしかなかったそれは段々とその音量を増し
頭痛すら覚え、エイジは堪えられずに頭を抱えてしまう
「それはね、招待状なの。ラビ様がお茶会をするからぜひ来て下さいって」
「絶対来てね。じゃないとラビ様、怒っちゃうから」
それ以上は何を肩る事もなく、その双子は目の前から消えた
後を追う事も叶わず、その場に立ち尽くすしか出来ないエイジ
その彼の目の前へ、今度は一羽のウサギが姿を現した
何かを訴えたいのか、エイジの脚元へとすり寄ってくるそのウサギへ
何事かと膝を折って見ればエイジの服の裾を噛み始め
引き始めたソレはまるで付いて来いとでも言っている様で
アリスの後を追おうにも何の手がかりもないエイジはその後について行ってみる事に
未だ頭の中に残る鐘の音
その音がもたらす頭痛に顔を顰めながら
エイジはウサギの後を追う事を始めたのだった……

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