《MUMEI》

「最近の土砂降り、すぐ止むとはいえおかしいですよね。雲なんかほとんど無い晴天なのに。」

雅俊も窓に近づきながら、空を見上げる。

「天気雨?」


山男も怪訝な顔をしながら一緒に空を見上げてしばらく空を見ていたが、突然、何かを思い出したように窓を全開にした。


「先生?な、ちょっ、雨入ってきてますって…」

わたわたとして止めようとする雅俊を気にすることなく、山男は窓から身体を乗り出し空を見上げる。

「雅俊っ、そこの試験管、乾かしてるやつ、どれでも良いから一本!」

「え?え?…はい。」


身を乗り出したまま雅俊に向かって手を伸ばして試験管を受け取ると、試験管に雨を入れ、ようやく山男は乗り出していた身体を元に戻した。

「なんなんですか?一体。」

たった数秒、試験管を外に出していただけで、その中には1cm以上雨が入っている。


「雅俊、もしかしたら、もしかするぞ。」

「??」

「これも憶測だけどな、可能性は高いかもしれない。結果が分かったらお前にも教えるよ。」




授業準備以外の実験なんか久しぶりだなぁ、と鼻歌まじりに実験の準備を始めた山男に、これ以上話をする気がなさそうだと判断した雅俊は、軽く挨拶だけして準備室を後にする。

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