《MUMEI》 一日目、出逢い「じゃー、瑞季はレジ点しちゃっていいよー。」 「あいよー。」 俺は千鶴の指示通りレジ点を始める。 「俺の入れ替わり誰ー?絶対始めてだから挨拶しなきゃだし、どんな人か知りたいんだけど」 「えーっと、今日は…かずくんじゃない?」 「かず、くん?」 「一言で言えば面白い人」 千鶴は真顔で言う。いや、お前それ…失礼じゃねぇか…? 「あぁー…、そう、なんだ…。面白い人ね」 「あ、ほら噂をすればかずくん来たよ」 千鶴が店の外を指差しながら言う。レジ点している手を少し休め千鶴が指差す方を見る。 俺は、一目惚れなんて信じていなかったけど…、本当にあるんだな、一目惚れ…。 かっこいい、それしか頭には浮かばなかった…。 「かずくん、おはよー」 「はよー」 かずくんはそういって、さっさと裏にいく。多分あの人、俺の存在に気づかなかったな…、まぁいいけどさ。 俺はまたレジ点に集中する。 数分後、かずくんが制服姿で出てくる。俺はレジ点も終わりあとは上がるだけだったが、初対面の方に挨拶せずに帰るという訳にもいかないので、かずくんが出てくるのを待っていた。 「あれ?噂の新人さん?」 「あ、はい。仁科瑞季です。これからよろしくお願いします。」 かずくんに声をかけられれば、俺は正面に向かい頭を下げる。 「ご丁寧にどうも。立花和真です。こちらこそよろしく。」 「じゃあ、瑞季はあがりねー。」 「あぁ、お疲れさまでした。」 「お疲れー。」 「お疲れ様ー。」 俺はタイムカードを押し制服を脱ぎ、上着を羽織る。 立花さん…か。一目惚れ…、この俺が一目惚れか…。意外なこともあるもんだ。 前へ |次へ |
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