《MUMEI》
一日目、出逢い
「まぁ、そうっすね。」
「瑞季、煙草吸ってから帰るでしょ?」
「あー、どっちでもいいけど…」
「じゃあ、うちも行くから待ってて。」
「はぁ?仕事は?」
「かずくんがいるし。」

お前、そんな理由…

「はぁ…、いいよ。早く来いよ。待ってっから。」
「じゃあ、うち煙草吸いにいってきます」
「あいよー。いってらっしゃい。」

立花さんも手を振っているし、多分一人で回せるんだろうな…。少し待てば、裏から千鶴が上着を羽織ながら出てくる。俺は、千鶴が出てきたのを見れば無言で店を出る。

「で、かずくんどうよ?」

店の裏で煙草を吸い始めて千鶴に唐突に聞かれる。

「どうって、なんぞ?」
「だから、どうって。好きそうなタイプ?嫌いそうなタイプ?」
「んー、初めて会ったしなんとも言えねぇな…、でも嫌いなタイプじゃない。」

いや、むしろ好きだし。というの早めておこう。なんか、怖いし。千鶴が立花さんを好きだったとき。

「ふーん…。瑞季はかずくんのこと好きになると思うよ。」
「なんでそう思うの?」
「なんとなくかなー?」

なんだそれ…。理由になってない。

「そっか。」

俺はそれしか言えなかった。多分千鶴も立花さんを好きなんだと思う…。俺は認めたくなかった。でも、千鶴が幸せになれるならって考えてる。どうすればいいんだろう。頭が混乱する。
もう、何も考えたくない…。

「瑞季?」

俺は千鶴に声をかけられて、はっとした

「な、なに?」
「いや、難しい顔して急に黙っちゃったから…。どうかした?」
「や、なんでも。じゃあ、俺帰るわ。今日飯当番だし」

俺は苦笑いを浮かべながら煙草を足で揉み消す。

「んー、おつかれねー」
「おぉ、お疲れー。」

俺は、帰路についた。音楽を聴きながら帰る。帰宅中も終始、立花さんと千鶴のことを考えていた…。

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