《MUMEI》

『あれは、大修道師
長様が服毒されてす
ぐの事でした。』

意を決した様にラン
ト修道師は話を始め
た。

『大修道師長様の部
屋に駆け付けた私達
は、虫の息の大修道
師長様を見付けまし
た。

私は直ぐさま大修道
師長様を抱き抱え声
を掛けました。

大修道師長様は震え
る手で机の上を指差
し『頼む』とだけ言
って息絶えました。

机の上には遺言書が
置いてありました。

…そう、確かにあっ
たんです。

…その時は…』

そこまで話して、ラ
ント修道師は言葉を
切った。

『…その時は?』

サルタンが続く言葉
を促す。


『役人がやって来て
部屋で事情説明をし
た後、机の上の遺言
書に目を向けたんで
す。

でも、あるはずの遺
言書が無かったので
す。』

無言で聞いていたケ
インがラント修道師
を睨む様に見ながら
口を開く。

『ラント修道師さん
よ、それは変じゃな
いか?アンタはさっ
き、遺言書を持って
るって言っただろう
?』

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