《MUMEI》

ケインの言葉に、あ
からさまに嫌な顔を
してラント修道師は
口を開く。

『はぁ、まだ話の途
中だと言うのに…え
ぇ、遺言書は確かに
持っていますよ。』

そう言って、懐から
遺言書らしき手紙を
取り出し、机の上に
置いた。

『紛失した遺言書を
何故、坊さんは持っ
てるんだ?』

サルタンの問いに、
ケインとジェルマも
頷く。

『…大修道師長様が
亡くなって暫く後の
夜の事でした。日課
の修道院の見回りを
していた時、大修道
師長様の部屋から物
音が聞こえて来まし
た。

それで部屋に入ると
何故か失くなったは
ずの遺言書が机の上
に置いてあったんで
す。』

『つまり、この遺言
書は一度誰かに盗ま
れて、また手元に戻
された物と言う事な
んだな?』

サルタンは遺言書を
手に取り言った。

『…ソイツは確かに
じーさんの書いた物
なのか?中身がすり
変わっている可能性
は無いのか?』

ケインの質問にラン
ト修道師は少し顔を
曇らせた。

『私もそこが気にな
りました。が、書か
れている文字は確か
に大修道師長様の直
筆による物でした。
内容も差しておかし
い箇所はありません
でした。
ただひとつ、気にな
る物が…』

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