《MUMEI》

門灯の下に浮かぶ表
札を確かめて、イン
ターホンのボタンを
押す。

『は〜い、麻木セン
セですか?』

直ぐさま聞き慣れた
剛史の声がインター
ホン越しに聞こえて
来た。

『あぁ、麻木だ。』

『ちょっと待ってて
ね〜』

剛史の声の後、電子
音が響き、目の前の
門が横にスライドし
た。


…おぉ、すげっ、自
動開閉式の門かよ。
相模原家の金持ちぶ
りに驚きながら、豪
邸内に怖ず怖ずと足
を踏み入れた。


『麻木先生、お待ち
しておりました。私
の都合に合わせてし
まって申し訳無いで
す。』

玄関先には、優雅な
微笑みを浮かべお辞
儀する相模原父。


『あ〜いえいえ、全
然大丈夫ですよ。お
仕事遅くまで大変で
すね。』

相模原父と会話して
いると、剛史が俺の
手を引いてくる。

『も〜センセ、早く
上がって上がって?
俺ね、センセの分も
夕飯作ったんだ、食
べて帰ってよね?』


『え?おい、剛史、
夕飯って…』

…まずいよな、生徒
の家でご飯なんて…

苦笑する俺を見て、
相模原父が口を開く


『麻木先生、剛史の
夕飯食べてやって下
さい、コイツ、昨夜
から下準備してたん
ですから…結構イケ
るんですよ、コイツ
の飯。』

『親父〜結構って何
だよ、素直に美味い
って言えよな!』

『生意気な、最初は
コゲコゲのモンしか
作れなかった癖に』

『ムキ〜〜!』

相模原父の背中をポ
カポカと叩く剛史に
デコピンを食らわす
相模原父。

仲が良いんだな〜と
微笑ましく眺めてい
た。

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