《MUMEI》

『取り合えず、大修
道師長様の書かれた
文を読んで見ましょ
う。』

そう言うラント修道
師の言葉に頷き、皆
も紙を覗き各々読み
始めた。

………………………
懺悔録
これは私の罪を書き
記す物なり。


本日、私は国王陛下
から〔二つの秘密〕
を賜った。

ひとつは、先日産ま
れし双子王子の片割
れ。金髪碧眼の天使
のように可愛い幼子

この愛し子は、災い
を齎(もたら)すと
処分されるはずだっ
た。

だが占い師の助言に
より、兄王子が無事
成人し世継ぎを授か
る迄、存命を認めら
れ、その期間この修
道院での管理育成を
任された。

もうひとつは、新薬
精製の秘伝書。この
新薬は、脳神経に関
する病気に有能な効
力を顕す物だ。

この新薬の為ならと
世界各国が高値で買
い取り、お陰で弱小
な自国が裕福で暮ら
せる財源となった。

だが、この新薬は精
製する過程に置いて
思わぬ副産物を生み
出す物だった。

それは、悪魔の薬と
言うべき物。健全な
人間にソレを投与す
れば、脳神経に破綻
を齎し、残虐行為の
みを貪る〔殺戮人間
〕を生み出す。

一人の研究者の手に
よって世に流れた副
産物は悪の手に入り
瞬く間に広がった。

殺戮のみにしか快楽
を見出だせぬ、人間
らしい感情を一切無
くした者を人々は、
〔KILLER DOLL〕
と呼び恐れた。

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