《MUMEI》

「ふぅ…」



職員室を出てすぐに、


無意識にため息をつく翔太。



(これでホントに引退か…)



表情は少し、


寂しげであった。



「翔太ッ!!」



「ん…?」



名前を呼ばれ、


視線を移す翔太。



「あぁ、おっす。」



「おっす!!
朝から職員室ってお前また何かやったの?」



「ばーか。


新キャプテン決めろって言われたんだよ。


ウチの部はキャプテンが決めることになってっからな。」



「ふ〜ん。」



声をかけたのはクラスメート。


2人は話ながら教室へと向かった。



「でも惜しかったよな。
俺も試合見に行ったけどマジ興奮しちゃったもん。」



「まぁ…
勝たなきゃ意味ね〜さ。」



「最後あいつ…


猪狩とか言ったっけ?


あいつが退場しなきゃ勝てたかも」



「猪狩のせいじゃね〜よ。」



「え?」



「結果的にそう見えたかもしんね〜けど、


あいつはあいつなりに考えてやってた。


俺も他の奴らにだって負けた理由はある。


退場したからあいつのせいに見えてるだけ。」



「…お前結構冷静なんだな。」



「つかお前は?
試合来てたってことはダメだったのか?」



「ん゙っ…と…な…」



「あ〜、もういいもういい。」



「いやちげぇんだよ!!」



「何が?」



「大会当日に2年が3人来なくてよ。


走る系補欠が走って惨敗。


俺が出た幅跳びもダメだった。


他の競技も似たような感じ。」



「なんだそりゃ…」



「つっても個人競技だからな。


リレー以外は支障ね〜よ。


実力不足。」



「の…割に結構冷静なんだな。」



「ホントは頭きてたけどな。


今日もあいつら見つけてボコろうかと思ってたし。


でもま…


何かお前の話聞いてたらそんな気もなくなったわ…」



「へ〜。」



「引退か…」



「つれぇな〜。」

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