《MUMEI》

気まず〜い沈黙が三
人に訪れる。

『やー、見とれる位
格好良いのかな〜俺
…わははっ』

沈黙を破ったのは、
空気を読まない丸山
さん。いや、読んだ
上での発言なのか。

不機嫌オーラを出し
まくりの愛一郎さん
が、ヒクリと口端を
歪めた。

『…萌子』

…ぎゃぁぁっ、凍て
つく冷気を帯びた声
色とメデューサの様
な愛一郎さんの眼に
射ぬかれて、凍石の
様に固まる私。

漫画なら、カチコチ
ピシッとか擬音が入
りそうです、ハイ。

も、もしもし?愛一
郎さん?…なんか凄
く怒っていらっしゃ
いますか?


『は、はいぃ?』

普段、温厚な旦那様
の変わりように、声
が上擦る。

ハアッ〜と盛大な溜
め息をひとつついて
愛一郎さんは一言。


『……飯、にして』


コクコクと頷き脱兎
の如くキッチンへと
向かう私の耳には、
愛一郎さんの呟きは
届かなかった。


『…俺以外をガン見
なんて許しませんか
らね、萌子サン?』

クスクスと不気味に笑う
同僚の姿に、引き気
味の丸山さんです。

…な、なんか怖ぇぇ
よ、愛一郎。俺、帰
ろっかな〜、いや、
でも話あんだよな〜
萌子さんに…。

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